2005年06月04日

イギリスの貧困

イギリスには若者のホームレスがとても多い。ヨークにいるホームレスのほとんどが若者である。そして、10代でシングルマザーになるケースもとても多い。街を歩いていると、とにかくまだとても若いのにベビーカーを押している女の子をを本当によく見かける。

その原因を一言で説明することはできないが、手厚い福祉政策がその要因の一つになっていることは否めない。いい仕事につけず、無理に低賃金のきつい仕事をしなくても生活保護で生活できるならそっちを選ぶ。また、イギリスではかなりの医療が無料で受けられ、出産にも金がかからない。シングルマザーにはそれなりの補助もある。

社会的弱者を守るために福祉は必要だし、それが手厚いなら、そのほうがいいに決まっている。しかし、それがこのような負の側面を生み出しているのもまた事実である。先日読んだ雑誌の投稿欄に、「我々が払っている高い税金が、シングルマザーの補助に使われるのは納得できない。好きで産んだのだから、自分の力で育てればいい。」というコメントもあった。

日本ではあまり聞かない「階級」という言葉をイギリスではよく聞く。パブも昔は上流階級と労働者階級の人たちでは飲む場所も分けられていた。今でもその名残で入り口が2手に分かれ、内装も2つに分かれているパブがある。4,5ヶ月前にはBBCでイギリスの貧困についてのドキュメンタリー番組がシリーズで放送されていた。自分の少ないイギリス滞在経験から言っても、イギリスには地域格差がかなりあると思う。「階級」と「貧困」。この2つがイギリスには歴然と存在する。

けっこう前になるが「Sweet Sixteen」という映画をTVで見た。スコットランドのグラスゴー、グリーノックが舞台のこの映画は、はげしいスコットランド訛りで話される。イギリスでも英語の字幕付きで放送されていた。刑期を終えて出てくる母親と、シングルマザーとして子供を育てる姉と一緒に生活することを夢見る15歳の少年が主人公だ。同情人物はそれぞれ厳しい過去を背負っており、それが具体的に語られることはないものの、彼らの感情がひしひしと痛いくらいに伝わってくる。母親を信じる少年と、厳しい現実。イギリスの影の社会に取り込まれていく少年の苦悩を描いたKen Loach監督の傑作である。必見の一本。

SWEET SIXTEEN
SWEET SIXTEEN

(2002年:U.K./Germany/Spain)
*第55回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞
監督:Ken Loach
脚本:Paul Lavaty
出演:Martin Compston

posted by Apple at 20:30| Comment(6) | TrackBack(0) | イギリス話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Appleさん、こんにちは。
おっしゃるとおりです。福祉が充実していることは結構ですが、国民が制度をabuseしていると感じます。医療費はタダだけど、公立の病院は待ち時間が異常に長いそうです。高尾慶子は著書の中で、「イギリスのシングルマザーは、ホステスをしてまで子供を育てている日本の母親の、爪の垢でも煎じて飲め」と激高しています。上流階級が特権にどっかり居座る代わりに、労働者階級に誤魔化しの飴を与えているのでしょうか?
Posted by 館主 at 2005年06月04日 21:11
手厚い保護があっても
そんな負の側面が出てしまうなんて
なんとも皮肉な結果ですね。
本当に必要としている人までも
批判の対象となってしまうのでしょう。
残念ですね。
Posted by nao at 2005年06月04日 21:33
館主さん、

コメントありがとうございます。公立病院の待ち時間ってほんと長いらしいですね。具合が悪くなって病院に行くのに、すぐに診療してもらえないってどう考えてもなんとかしてもらいたい話ですよね。その改革がこないだの総選挙の争点にもなってましたね。

ブレア政権になってから、サッチャリズムやそのまた昔の労働党とは違った福祉政策を採っています。ブレア労働党は硬直した階級社会を打ち破ることを掲げ、様々な育児支援や若者の教育・職業訓練支援をやってます。でもそういった福祉政策が手厚くなると、結果的にそれを悪用(?)したり、その政策に甘えてしまう人々が多くなってしまう現実がある。

こういった問題は興味があるから書き始めると長くなってしまうので止めときますが、とにかく難しい問題ですよね。

Posted by Apple at 2005年06月05日 04:10
naoさん、

コメントありがとうございます。そうなんです、本当に保護を必要している人たちが犠牲になるのがやるせないです。

日本の知的障害者施設に関わることがあるのですが、日本もそういった障害者に対する援助がどんどん削られようとしています。削減の原因はいろいろあるのですが、今まで障害者年金で暮らせていた人たちが、国や自治体の援助だけでは暮らせなくなるほど減らされようとしています。特に知的障害者は親や兄弟、親戚に見捨てられてしまうケースが非常に多いのです。彼・彼女らが、無知、非情な役所・政治家の政策で犠牲になっていくのを見るのは本当に辛いです。
Posted by Apple at 2005年06月05日 04:26


最近、フーディーの記事を読みました。
フーディーも何か歴史的なもの、
差別のようなものが背景にはあるよう
なのですが実際はどうなのでしょう?

また、ホームレスが若者に多いというのは
日本より独立というか、親元を離れる
タイミングがはやいのでしょうか?

Posted by 夢の修理屋 at 2005年06月05日 23:40
夢の修理屋さん、

コメントありがとうございます。

今イギリスで騒がれているフーディーは、深刻な社会問題となっている若者の犯罪や反社会的行動の象徴となっているようです。
ただフーディーの格好は若者のファッションとなっていることから、必ずしもいわゆる「不良」、つまり問題を起こす若者だけがそういう格好をしているわけじゃない。
それなのにこのブログでも前に取り上げましたが、格好だけでショッピングセンターに立ち入り禁止にされたりすることが差別だとなっているわけです。
政府の反社会的行動を厳しく取り締まる意向がこのような社会的流れに繋がっています。(もちろん世論があるから、政府はそういった対策をしてるのですが。)

若者のホームレスが多い原因は、夢の修理屋さんのご指摘の通り、独立のタイミングの問題が大きいと思います。

さっきの問題も含めて、コメント欄で書くには長すぎるので、別途記事の方でこれらの問題を扱ってみたいと思います。
(どこまできちんと書けるかはわかりませんが。)
Posted by Apple at 2005年06月06日 02:37
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